鉄条網越しに、イオキに初めて会ったときのことを思い出す。イオキが鉄条網を引き裂き、己の左腕を喰い千切ったときのことを思い出す。
同じ熱と震えが、胸に満ちる。今は冷たい左手の下で、イオキの体からは、あの時と同じ匂いがする。あの時と同じ強張りが伝わる。
緑の瞳の睫毛の先が、レインの頬に触れる。
イオキの吐息が聞こえる。ロミの悲鳴が聞こえる。
レインは目を瞑り、イオキを抱きしめる腕に力を入れる。
「それでも俺は、三人一緒にいたい」
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