一体ここはどこなのだろうか。

 夢でも見ているのだろうか。


 イオキとロミがいる。

 降りしきる雨の中、ロミは金色の瞳を燃えるように光らせ、こちらを睨みつけている。 イオキは緑色の瞳を伏せている。二人とも服は薄汚れ、顔は土気色、何より、今にも粉々に砕け落ちてしまいそうだ。

「どいてよ」

 と、ロミが低い声で言った。

 レインは正面からロミを見つめ返した。

 どく気は一歩もなかった。レインがどけば、背後にいるイオキの盾になる者がいなくなる。 そうしたら、ロミは震えるその脚で、真っ直ぐイオキに向かっていくだろう。

 レインはゆっくりと両腕を広げ、十字架にかけられた人のようになった。

「嫌だ」

 初めて聞いたその声に、ロミは一瞬、虚を突かれた顔になった。 が、すぐに歪んでいく。悔し気に、怒りを孕み、絶望に染まって。

「その子は新しいグールの王なのよ。その子が生き続ける限り、新たなグールが生まれるのを止められないのよ」

 雨空を引き裂くような声で、ロミは叫んだ。

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