レインが作業台から降りると、「おらあ!」とタキオは少女二人を乗せたまま、作業台を持ち上げた。

 二人がきゃあきゃあ言う中、レインはおずおずと、手招きするルツの元へ行った。
 レインがやってくると、ルツは優しく微笑んだ。

「良い子ね。怖がらなくて、いいのよ」

 レインをダンボール箱に座らせ、自分も隣に座ると、ルツはレインの左手を取った。

「ちょっと見せてちょうだいね」

 レインは体を固くしたが、抵抗しなかった。

 ルツはレインの左手首から包帯を外すと、眼鏡をかけ、真剣な目つきでそれを観察した。
 彼女のふわりとした髪が動くと、ロミよりももっと優しい、瞳の色と同じ、菫と石鹸の香りが漂う。

「……痛かったでしょう」

レインの傷口を見て、ルツは顔を歪める。

「よく頑張ったわね」

 ルツの眼鏡が光るのを見ながら、レインは黙っていた。

 ドスン、と作業台を中央に据え、タキオがこちらにやってくる。

「どうだ?」

ルツは眼鏡を外して振り向いた。

「流石シモン先生ね。この傷口なら、何の問題ないわ。使骸さえ用意出来れば、肉体と接続するのは簡単だと思う」

「そうか。じゃ、早速造ってやってくれ」

「この子は、普通の使骸でいいのよね?」

ルツの確認に、タキオは頷く。

「ああ」

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