すると、ロミの声がした。 「……普通のでいいの?」 大人たちは振り返った。 いつの間にか作業台から降りたロミが、そこに立っていた。 金色の細い足をジャンパースカートから覗かせ、ロミはつかつかとこちらにやってくると、レインの顔に手をかけ、振り向かせた。 レインはロミを見上げた。 「レイン、それでいいの?」 裸電球の下で、彼女の金色の瞳は、獣のように輝いていた。 「レインは、レインをこんな風にしたグールが、憎くないの?」 あの時と同じだ。 レインが診療所で目覚めた時と同じ。 静かな表情の中で、瞳だけが、あの時と同じ、目を背けたくなるほど激しく歪んでいる。 レインの頬に当てられた手に、ほんの僅か、力が入った。 「グールを殺したいって、思わないの?」 タキオが静かに制した。 「やめろ」 嫌な沈黙があった。 タキオはため息をついた。 「もう何回も、何百回も言ってるけど、そいつ、言葉分かんねーから。言っても意味ねーから」 ロミはうつむいた。 その下唇がギリ、と噛まれるのを、レインは見た。 -------------------------------------------------- |