早い。

 トマの後ろから、キリエは見ていた。

 男たちがこちらへ襲いかかってくるより、ナイフが額に刺さる方が、確かに早かったのを。

 その、敵に対する反応。
 その、ナイフを投げる動き。

 普段の彼からは、とても想像のつかない、その冷静な行動――

 まさに、戦闘のプロたる軍人。 いや、それ以上。

「こら、テクラ!」

 ヒヨが怒鳴る。

 投擲用の薄いナイフを手に、テクラは飛び上がった。

「条件反射で殺すんじゃねーって、いつも言ってんだろーが!」

「す、すいませんっ!」

 わたわたとするテクラを尻目に、ヒヨはのたうち回る男たちへ近づいた。

「……と言いつつ、あたしも結構、殺しちゃうタイプなんだが」

 ニヤッと笑って、男たちの頭に狙いを定める。

「ま、大人しく質問に答えりゃ、見逃してやるよ。人買いザネリ、見なかったか? もしくは妙にコソコソしてる、ゴリラみたいな男」

「し、知らねえっ!」

「ん〜? 本当か〜?」

 引き金に指がかかるのを見て、男たちは悲鳴を上げる。
 テクラが慌てて、割って入った。

「じゃあ、ここから三十六階に行ける道ってないですか? 前は確か、ありましたよね?」

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