それらをやり過ごし、薬物中毒者で溢れる階段を二階分降りると、打って変わって真っ暗な、人気のないフロアーに出た。

 赤く光るランプを頼りにエレベーターを見つけ、ヒヨがボタンを押す。すぐにエレベーターが来て、彼女を先頭に四人は乗り込んだ。

 外とは対照的に、箱の中は煌々と明るかった。
 階のボタンはなく、扉が閉まるとすぐにエレベーターは上がり始めた。

「グレオさん、グレオさん? ……」

「どうした?」

「なんか、さっきからグレオさんから応答がなくて……」

「大丈夫だろ。ザネリの奴の行き先は、見当がついてるんだし」

「いや、僕はグレオさんの心配をですね……」

 言いかけて、テクラは、トマが銀縁眼鏡を反射させて、じっと天井を見つめているのに気がついた。

 テクラが顔を上げ、ヒヨが顔を上げる。

 そこには、『地獄行き』の文字と共に、巨大な三頭犬の絵が描かれていた。

 ゆっくりと、テクラの顔から血の気が引いていった。

「これって……」

「『三頭会』のマークだな」

 ぎゃっ! と叫び、テクラはエレベーターの扉をドンドン叩き始めた。

「ヤバいですよ! これ、三頭会の事務所に直通のやつですよ!」

「三頭会か…… 三人兄弟で牛耳ってんだっけ? 主な稼業は薬の密売」

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