同時に四人は、エレベーターの中から飛び出した。 向かってくる敵を早くも二人倒しながら、テクラが「上へ!」と叫ぶ。 キリエは上階を見上げた。ガラスで出来たロフト風のフロアーの奥に、そこだけ無骨な鉄製の扉が見えた。 その視界を、躍りかかってきた構成員が塞ぐ。 キリエは拳銃を構えようとしたが、それより早く、トマの黒いコートが翻った。 銀縁眼鏡に覆われた表情を一つも変えることなく、トマの体が鞭のようにしなる。 直角に構えた腕で相手の攻撃を受け流し、目にも止まらぬ速さで体が回転したかと思うと、次の瞬間、右足が相手の鳩尾に入る。 「ぐふう」 と声を上げ、構成員は崩れ落ちる。 さらに襲いかかってくる二人目、三人目をいなしながら、トマとキリエは、ガラスの階段を駆け上がった。 向かってくる敵を避け、時にはヒールで蹴り落としながら、キリエが先行し、下から追いかけてくる敵と上から落ちてくる敵を、トマがまとめて叩き落とす。 階段を上がりきったところで、キリエはチラリと下を見た。 ガラスの床の下、彼女の真下にいる構成員が、口をあんぐりと開けて彼女のスカートの中を凝視している。 その背中にナイフが刺さり、彼は最期に見た絶景を酒の肴にすることもなく、絶命した。 「早く行ってください!」 さらにナイフを投げながら、テクラは叫んだ。 -------------------------------------------------- |