片手にサバイバルナイフ、片手に投擲用ナイフを持って戦うテクラは、すでに返り血で真っ赤になっている。彼の手首が翻るたびに、まるで銀色の燕のようにナイフが飛び、さらなる鮮血が彼を染める。
 そのテクラと背中合わせに、ヒヨも二丁拳銃を撃ちまくる。高価そうな置物が割れ、絵画に穴が開き、モダンなスイートルームが、見る見る内に無惨な姿になっていく。

 そうして、そこに積み上げられていく、構成員たちの死体。

 一階の敵はあらかた殲滅したと見るや、テクラは上階へ走った。
 しかしヒヨはその後に続かず、さらに数人の構成員を銃身で薙ぎ倒し、ソファセットの上に仁王立ちになっている若頭を狙った。

 一直線にこちらへ向かってくる彼女へ、彼は、小型のサブマシンガンを向ける。
 彼が引き金を引いた、その瞬間――

 大きな黒い鴉が、舞い降りた。

 ヒヨが囮であることを悟る間もなく、上階から飛び降りたトマの踵に脳天を一撃され、若頭は音もなく崩れ落ちた。

 彼の手から飛び出したサブマシンガンは、大量の弾丸を撒き散らしながら宙を飛んだ。
 弾丸は、ガラスの階段を直撃した。

 派手な音を立てて階段は砕け落ち、上階まで後一歩という所だったテクラは、足場を失い、最上段からぶら下がった。

「それ以上動くんじゃねーぞ!」

 ガラスが砕ける音の中、若頭の頭に銃を突きつけ、ヒヨが叫ぶ。

「ううっ」

 テクラは呻いた。割れたガラスの破片が手のひらに食い込むが、手を離すわけにはいかない。

 と、その手を、白い腕がつかんだ。
 テクラは顔を上げた。
 キリエは無言で体に力を入れると、一気にテクラを上階へ引っ張り上げた。

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