「レールの下って、ここもレールの下だろうが」とヒヨは呟いたが、トマはテクラを振り仰いだ。

「テクラ、分かるな? 先に行け!」

「分かりますけど、でも……!」

 崩落した階段の上で、テクラは躊躇う。

「仕方ねーだろ。あたしらはそっちに行けねーし。グレオのことも心配だし、このままじゃユーリも危ないし」

 テクラを見上げ、ヒヨはウィンクした。

「ちゃんと一般市民様をお守りしろよ?」

 すでに鉄の扉へ向かっているキリエと、仲間たちとを見て、テクラは迷っていたが、次の瞬間、覚悟を決めたように頷いた。そして、キリエと共に走り出した。

「……いやー。あいつのこと、色んな意味でヒヨコだと思ってたんだけどなあ」

 二人の姿が鉄の扉の向こうに消えると、ヒヨはニヤニヤしながら呟いた。
 その下で、気絶していた若頭が呻き声を上げる。
 ヒヨはガチャ、と銃を突きつけ直した。

「けどやっぱ、まだまだ半人前だからなあ。あたしらもさっさとここを片づけて、後を追わねーと」


 頭上から轟音が鳴り響く。それに合わせて、床が振動する。

 テクラについて走りながら、キリエは自分が、レールの下へ近づいてきているのを感じた。

 と、前を走っていたテクラが急停止した。

 キリエがテクラの後ろから顔を覗かせると、通路を塞ぐように、男が大の字になって倒れていた。

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