ザネリは逃げようとするユーリの首根っこをつかむと、細身の体からは考えられないような力で、ほとんど止まりそうなスピードで走る貨物列車の、最後車両に放り込んだ。
 最後車両の、人間が行き来する為の外側のスペースに、ユーリは尻もちをついた。そこへ、ザネリも飛び乗った。

 テクラはナイフを投げたが、ザネリのナイフに弾き返された。

 再び速度を上げ始めた列車の最後車両が、テクラの目の前を通り過ぎる。
 同時にザネリの元から飛んできたナイフを、テクラはサバイバルナイフで叩き落とす。


 閃くナイフ越しに、二人の視線が交差する。
 不気味に笑うザネリと、ぎり、と睨みつけるテクラと。


 そして、そのまま――


 貨物列車は去っていった。

 ユーリと、人買いザネリを乗せて。


 キリエの赤い瞳に、小さくなっていく列車が映る。

「くそっ!」

 とテクラは吠えた。

 その声は、どこまでも高い、クレーター・ルームの空へ吸い込まれていった。

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