うっ、とテクラは言葉に詰まる。

「待ちなよ、あんた」

 とその場から動かず、頭だけ動かして、ヒヨが声をかけてくる。

「アンダー・トレインは迷宮なんだ。おまけに、住人は皆犯罪者か、その一歩手前。この少人数で突入ったって、危険過ぎる」

「そ、そうですよ! 下手すれば全員、迷宮に呑まれて終わりです! せめて、他の仲間の到着を待ってから……」

「だが、仲間は第二都市全域に広がっている。待っている時間はない」

 と、トマが言った。
 ヒヨは振り向いて、トマを見た。

「グレオ、二人を追え」

 と、トマは無線機に向かって言った。銀縁の眼鏡が、光った。

「我々も、今からアンダー・トレインに入る。随時、居場所を報告しろ」

『了解!』

「……」

 ヒヨは煙草の煙を吐き出すと、キリエたちの方に向かって歩いてきた。

「……だそうだ」

 ヒヨはぽん、と、口をOの字にしているテクラの肩を叩く。一重の目がキラキラと輝き、唇がにっと三日月の形になる。

「リーダーの奴、分かってんじゃねーか。そうこなくっちゃな。

頼んだぜ、テクラ。
元アンダー・トレインの住人君」

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