「お前…… 驚かすんじゃねーよ! 心臓止まったかと思ったわ!」

 レインはじっと、漆黒の瞳でタキオを見上げる。

 タキオはしばらく何か考えていたが、やがて身を屈め、低い声でレインに言った。

「お前、本当は、俺たちが言ってること、理解してんのか?」

 レインは答えず、後ろを向くと、すたすた歩き出した。
 大きなため息をついて、タキオも後に続く。

 タイル張りの台所へ入ると、レインは人一人入れそうな、巨大な食器棚を開けた。「?」とタキオが中を覗き込むと、食器棚の中は空で、奥に地下へ降りる階段があった。
 レインは食器棚の中へ入って階段を降りていき、タキオもそれに続いた。

「あら、電話は終わった?」

 階段を降りた先は、冷え冷えとした、コンクリートを打ちっぱなしにした、倉庫のような場所だった。
 裸電球の下で、ルツがくるりと振り向いた。

「ようこそ、私の工房へ!」

「いや…… 工房っつーか」

 タキオはぐるりと辺りを見回した。

「普通に物置だろ、ここ。コタツとか置いてあるし……」

「ま、半分はね」

ニコッと笑ってルツは言う。

 ロミが、興奮した表情で駆け寄ってきた。

「ねえねえ、凄いんだよ!ここから裏の川に出られるの!」

 タキオの手をぐいぐい引き、ロミは工房の反対側へ連れていった。

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