第二都市から列車に揺られること、およそ二時間。

 タキオが第一都市駅に降り立った時には、すでに昼時で、激しい雨が降りだしていた。

 大勢の人間でごった返す駅構内で、高いアーチ型天井に雨の当たる音を聞きながら、タキオは公衆電話にコインを入れた。

「……んだよあいつ。出ねーな」

 十回呼び出し音が鳴ったところで、タキオはため息と共に電話を切った。

 駅の売店でビニール傘を買い、外へ出る。タクシーの運転手に目的地への行き方を聞き、「乗せていこうか?」と言う運転手に手を振って、別れる。

 クレーター・ルームと言う通称がついている第二都市に比べると、第一都市の風景は、ごく静かだった。
 街並みは古く、先進的な技術と都市構造を持っていた第二都市とは対照的だ。駅前にはさすがに新築のビルもちらほら建っているが、それでも第二都市のような賑わいはない。しかし決して寂れていると言うわけではなく、むしろ、大きな建物の数は、こちらの方が多いくらいだ。

 色とりどりの傘を差して、行き交う人々。石畳に響く足音。いつか見た、古い映画のワンシーンを思い出させる。

 クレーター・ルームが若者だとしたら、とタキオは道を歩きながら思った。この第一都市は、懐のゆったりした、落ち着いた大人と言ったところか。さすが、首都機能を担う都市だけはある。

 やがて、その首都機能の中枢たる部分が見えてきて、タキオは足を止めた。

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