政府議事堂から出た二人は、護衛と共に運転手付きの公用車に乗り、ユーラク第一都市へと出た。

 柔らかな革張りのソファに腰かけ、スモークガラスの内側から、ミトは首都の街並みを眺めた。

 黄色く霞む景色の中に、白地に金色の太陽を描いたムジカの旗が翻る。ユーラクは乾燥した、砂の国だ。首都の地面はアスファルトで固められているにも関わらず、街の外から吹いてくる風が、砂埃で街の景色を煙らせている。

 ワルハラ第一都市に比べると圧倒的に緑が少なく、雑多な印象だが、活気は負けていない。
 しかし、どこか寂れている感じが拭えないのは、砂埃のせいだけだろうか?
 ヒビ入ったコンクリートの建物に、シャッターの降りた店。代わりに路上をたむろする物売り。道路は汚れ、交通ルールが存在する様子もない。しかし政府の公用車が通れば、車も人間も、顔色を変えて道を開ける。

 そのまま第一都市の主要施設をいくつか訪ねた後、公用車は周辺都市や鉱物の採掘場などへ向かった。

 それらを見て回りながら、国民の失業率、犯罪発生率、地方格差、その他諸々が記された資料をめくり、ミトは軽くため息をつく。

 豊富な地下資源に恵まれているにも関わらず、ムジカがそこから得られる利益を、国民に還元していなかったのは明らかだった。石油や鉱物は全て、彼の美的欲求を満たす為消えていったのだろう。

 何十年も昔、ワルハラの領主に就任したばかりの頃のことが、頭をよぎる。あの時よりは幾分マシだろうか。ムジカは不正に利益を貪ってはいたが、その一方で国民が最低限の生活が出来るよう、それなりの政策も取っていた。

「ミト様」

 とコジマが言った。

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