まだ息のある兄の眼が、ぐるんと回ってこちらを見たのを。 ――お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん! ロミは狂ったように叫ぶ。 村全体を覆う悲鳴と銃声。砂の上に倒れる体。赤く染める血。 涙で歪む視界の中、口元を血に染めたムジカが、こちらにやってくる。真っ赤に染まったスカーフが、ほどけかけ、砂嵐になびいている。 ああ、今日、世界は終わる。 あのトンネルのように、どこへも続かない、深い闇へ。 ムジカは、ロミの足に指をかけ―― ――いとも容易く、それを引きちぎった。 はっ、とロミは目を覚ました。 体中の血管が、膨張したかのように、気味の悪い音を立てていた。頭と体が、重い。皮膚は寝汗でびっしょりと湿っている。 「……夢……」 -------------------------------------------------- |