再び長い沈黙があり、ロミはタキオに尋ねた。

「どうして今まで教えてくれなかったの?」

「え? そりゃあお前、なんつーか、こういう話は道徳的? にどうかなー、と思ってよ」

不機嫌そうに頭を掻くタキオに、「何それ」とロミは明るく笑った。

「今さらだよ、そんな。グールは人間じゃないんだから」

 頭を掻く手を止め、タキオはチラリとロミを見下ろした。
 ロミは笑顔のまま、テーブルの上の釣鐘草に視線を落とした。

「そっか。あいつは、死んだんだ」

 膝の上に置いた手が、テーブルの下で、ギュッと震える。握りしめた拳の節が、硬い金色の足に当たる。


 ロミの頭の中で、昨夜見たばかりの悪夢が、二年前の惨劇の記憶が、蘇る。


 死んだ。

 あの悪魔が。

 笑いながら家族を喰い殺し、私の足を奪った、悪魔が。


 黒いかまどの中で、憎しみの炎が大きく揺らぐ。
 今にも消えそうに、大きく、大きく、何度も何度も。


 しかしその揺らぎが収まった時――


 炎は、それまでよりも、大きく燃え上がった。

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