「一千万て、すごいね」

「ああ、すごいな」

「ポニーが買えるね」

「ポニーでも、キリンでも買えるな」

「見て、この人なんかすごい」

 そう言ってロミは、一人だけ額の飛び出た賞金首を差した。
 どこぞの社長を思わせる初老の男が、でっぷりとした腹を突き出し、『一億』という文字の上でにこやかに笑っている。

「和都六(ワトム)だろ? 八つの組織から成るエイト・フィールドの、さらに頂点に立つ男だよ。そんなん、手ぇ出したら、世界のどこにも安住の地は無くなるぜ」

「ふうん……」

ロミはリストをなぞった。

「エイト・フィールドの他の幹部も、すごい額。有名な反グール主義テロリストもいるけど、全体的にエイト・フィールドの方が高いんだ」

意外、と首を傾げるロミに、タキオは説明した。

「まあ確かに、エイト・フィールドはあくまで巨大な犯罪組織で、直接グールに刃向かおうって集団じゃない。けど、グールにとって一番怖いのは、自分たちの命を狙ってくる輩じゃなく、国境を越えた全世界的組織なんだよ」

「どうして?」

「グールにとって、本来、人間は敵じゃない。武装した人間が百人束になってかかったところで、素手のグールには敵わないし、さらに奴らには軍や秘密警察っつう手下もいる。はっきり言って、百人、千人単位のテロリストなんざ、奴らにとっては敵じゃないのさ。
けど、百人じゃなく、全世界、何十億の人間が束になって、あいつらに向かっていったらどうだ?」

ああ、とロミは呟いた。

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