「奴らが最も恐れているのは、それだ」

 タキオはきっぱりと言った。

「蟻だって、群れになれば象をも倒す。グールが怖いのは、最高の使骸に完全武装した一人のテロリストじゃなく、団結して向かってくる丸腰の一般市民だ。 組織の中身が問題なんじゃない。人間たちが手を取り合えぬよう腐心してきたのに、それでも全世界的な組織が存在しているという事実が、グールたちにとって脅威なのさ」

 ――それじゃ、たった二人でグールに挑もうとしている私たちの行動は、無意味ってこと?

 口先まで出かかった言葉を、ロミは慌てて呑み込んだ。

 そんなわけない。だって、タキオがそんな無意味なことをするわけがない。きっと、何か策があるに決まっている。

 ロミの動揺に気づかない様子で、タキオは続けた。

「つーわけで、俺たちはここに載ってる賞金首を倒す。ロミは実戦経験がほとんどないし、本気でグールとやり合うつもりなら、その前哨戦としてももってこいだろ」

「任せて!」

 一瞬感じた不安を振り払うように、ロミは元気よく拳を握った。

「じゃあ、レインの使骸が出来たら、エイゴンへ行くんだね!」

「いや、エイゴンに首さえ持ってければ、首を取る場所はどこでもいい。ここに載ってる奴らが、エイゴンにいるとも限らないしな。 ……それより」

タキオは、レインを見た。

「こいつ、連れてくのか?」

 ロミの動きが止まった。

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