「そうかな?」

 ニルノはあっけらかんとした顔で城を見上げた。

「いつも見てるから、そういう風には思わないなあ」

「……」

「それより!」

ニルノは満面の笑みで、タキオの背中をバンバン叩く。

「こうして直接会うのは、実に一年ぶりじゃないか! タキオは、第一都市に来るのも初めてだろ?案内してやるから、観光しつつ、旧交を温めようよ!」

 返事も聞かず、先に立ってどんどん歩き出すニルノを、タキオは慌てて追いかける。

「観光なんかしてる場合じゃねえんだよ。電話でも言っただろ。金が必要なんだって」

「大丈夫大丈夫! 交通費くらい奢るから!」

「話を聞け!」

 周囲の人間が傘の下からじろじろとこちらを見ていることに、ニルノは気づいているのかいないのか、オレンジ色の傘を振り、意気揚々とレールを渡る。
 そのままニルノは車道のど真ん中に停まっていた、チョコレート色の路面電車に乗り込んだ。引きずり降ろそうとしたタキオも、発車した電車に引きずられるようにして、結局乗ってしまった。

「さあて、まずはこの、第一都市の構造について説明しようか。第一都市は、ワルハラ政府が置かれる『五百の城』と、それを囲む市民の憩いの場『白馬の森』を中心にした街でね。この路面電車は、白馬の森を囲むように敷かれた環状線なのさ。だから愛称は、ズバリ『ドーナツ号』。市民は無料で利用出来るし、勿論市内観光にも最適!」

 二両編成の最後尾に陣取り、ニルノは手振りもよろしく、説明し始めた。

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