――結局、市内を一周し、有名なブランドの本店、美術館、寺院などを見学させられた後、タキオが「腹減ったんだけど…」と言い出した時には、五時を過ぎていた。

 オッケー! とニルノが連れていったのは、小さなカレー屋だった。
 二人は二階に案内された。全体的に暗く、毒々しい色の造花や極彩色の置物などがひしめく中に、大きなテレビがあり、老人が一人、カレーを食べながらニュースを見ていた。

「いつもの二つね」

 金色の象の置物が置いてある席に着くと、ニルノは眼鏡を取り、オシボリで顔を拭きながら言った。

「よく考えたら、昼飯食べるの忘れてたね! でも君、全身使骸化したくせに、腹減るのかい?」

「当たり前だろ。内臓まで使骸になったら、ただのロボットじゃねえか。――じゃなくてだな」

 どん、とタキオは拳でテーブルを叩いた。

「よーやく落ち着いて話せるな。え? 昨日、俺が電話で何て言ったか覚えてるか?」

「五千万のこと? だから昨日も言ったけど、五千万なんて無理だって。どうやって工面する気なんだい?」

「だからそれを、相談しに来たんだろうが」

「金なんか払わなくても、首に包丁でも突きつけて、脅して無理矢理造らせちゃえば? 君、そういうの得意だろ」

「お前、俺のことをどういう風に思ってんだよ……」

タキオは両手で顔を覆うようにして、ため息をついた。

「そんなん、最後の手段だろーが。それにあの意地悪母さん、絶対そんな脅しにゃ屈しないタイプだぜ」

「セノ・ルツさんね。一応調べたけど」

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