ニルノは固い表情で腕組みし、テーブルの上の金の象を凝視している。

「あの時の勢いは、どこ行っちまったんだよ」

 ニルノは答えない。

「……なあ。例の計画は進んでるのか?」

 タキオは尋ねた。
 ニルノはしばらく黙っていたが、やがて呟いた。

「俺だって努力はしてる。けど、そう簡単に行くわけないだろ」

「全世界共通のネットワーク」

とタキオは言った。

「俺が一人で、グールに特攻したって意味がない。そいつがなきゃ、俺たちの計画は成功しない。そいつが作れるのは、ワルハラで唯一、新聞社とテレビ局両方持ってる、ワルハラ中央報道局に勤務してるお前だけだ。お前だって、それが目的で中央報道局に……」

「分かってるさ!」

 ニルノはタキオを見ないまま、大声を上げた。

「でも、グールたちは、人間たちが結束して刃向かってくることを、何よりも警戒している。ワルハラでさえもそれは同じだ。奴らによって作られた国家間の見えない壁がどれだけ高いか…… それを越えて、全世界に共通するネットワークを作るなんて、夢物語もいいとこだよ!」

 と、そこへ、金属のプレートに乗ったカレーのセットが運ばれてきた。
 腕組みしたまま、ニルノは言った。

「……君、どっちがいい」

「へ?」

「チキンか、マトンか」

「ああ…… じゃあ、マトン」

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