地下工房の床を踏んだニルノを待っていたのは、獣のように暗闇で光る、一対の瞳だった。 「うわっ!」と驚きの声を上げて足を止めたニルノは、それがあの、使骸の装着手術を受けた少年であることに気がついた。

 瞳はギラギラとニルノを見つめてくる。怒るでもない、責めるでもない、ただ警戒心をむき出しにした瞳。

 ニルノは息を呑むと、そろそろと話しかけた。

「や…… やあ、元気かい? 左手の調子はどう?」

 レインは答えない。  ニルノは唾を飲み、やがて下を向いた。

「……ごめんよ」

本当に、心から悔いている声で、彼は呟いた。

「こんな大騒ぎになるとは、思わなかったんだ」

 背後から、ルツが鋭く言う。

「思わなかった? あんな記事を書けば、世間がどんな反応をするかなんて、少し考えれば分かるでしょう。 おまけに約束を破って、あの子の顔写真まで載せて」

「確かに記事を書いたのは俺だけど!」

ニルノは振り返り、泣きそうな声で言った。

「顔写真を使ったのは、俺じゃない! 俺のファイルに挟んであったのを、編集長が勝手に使ったんだ!」

 ルツは本気で呆れたような、半ば軽蔑するような眼差しで、ニルノを見つめた。見つめられ、ニルノはうつむいた。

--------------------------------------------------
[326]



/ / top
inserted by FC2 system