銃弾をかいくぐって相手を倒そうと思っても、マシンガン並みに、 使骸から発射される弾は途切れない。棚の間に隠れようと思っても、棚の向こう側は全て壁にくっついているので、袋の鼠だ。

 もう逃げ場はない。リネン室の外に出るしか。

 ロミが覚悟を決めたその時、ぐらりと、大きく船が揺れた。

 それまでは、陸にいると錯覚してもおかしくない程静かだった波が、急に大きくなって、船をゆりかごのように揺らす。
 カトリが蹴飛ばしていったバスケットが床を滑り、気絶しているアリオにぶつかる。 扉を開ける寸前だったニルノの指は虚しく宙を掴み、不意を突かれた女も体勢を崩して、咄嗟に近くの棚に掴まる。

 ロミもその場に転び、肘を擦りむいたが、そのことに気づく余裕はなかった。 すぐさま上半身を起こし、途切れた銃声の合間を縫い、ロミは女に向かって叫んだ。

「待って! 私たちは、あなたたちと同じだよ!」

 再び構えられた銃口が、ぴくりと止まる。
 眉を顰めるオリザに、ロミは続けた。

「あなたは…… あなたは、反グール主義テロリストグループ『東方三賢人』のリーダー、鄙浦(ヒナウラ)・オリザでしょ?」

 オリザは灰色の瞳を、微かに細めた。

 同時に、獣が呻くような、気味の悪い音がした。

 対峙するロミとオリザの後ろで、ニルノがリネン室の床に吐く音を、ユニコーン号の汽笛が、ボーッとかき消した。

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