ヒヨがどれ程必死にテクラを探したか、普段、テクラにきつく当たっている彼女の姿からは、想像もつかないだろう。
 そして、結局テクラを見つけられずに戻り、地上でユタと戦っているザネリを見つけた途端、グレオの制止を振り切って 発砲した時の、その表情も。

 三つ巴の戦いで、ヒヨは右腕と心臓の上を深く刺された。残った左腕で最後にザネリの額を撃ち抜こうとしたが叶わず、 引き金を引く寸前、出血多量で倒れた。逆にトドメを刺そうとザネリがナイフを振ったところに、グレオが飛び込んだ。

 ヒヨの前に立ちはだかったグレオの銃、ザネリのトレンチナイフ、ユタの半月刀。社の屋根の上に立ち、それらを見下ろすイオキ。背後からイオキへ迫る男たち。 そして彼らに向けられた、トマの大口径銃。


 全てが血に染まろうとしたその瞬間、イオキが社の屋根から飛び降りた。


 その、小さな白い姿は、ひとひらの雪のように、社を照らす篝火へ落ちた。


 爆発するような音と共に、炭と木片、油が飛び散り、社の柱に燃え移った。人々は悲鳴を上げた。
 ザネリとユタ、グレオは思わず動きを止め、すぐそばに落ちたものへ振り返った。
 後一歩というところまでイオキを追い詰めた男たちは、声を上げ、蛇神像の間から地上を見下ろした。
 トマは銃口を下ろし、立ち上がった。


 群集が見つめる中、バラバラに壊れた鉄の燭台の上で、イオキはゆっくり立ち上がった。
 全身を、地獄の炎に焼かれながら。

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