無線機が額に当たった。だが、ミアンは悲鳴を上げ、無線機を拾い上げることも忘れていた

 無線機を放って寄越したタキオの姿は、そのまま引き摺られるようにして、あっという間に通風孔から消えた。
 反射的に後を追おうとするミアンの足を、レインが掴んだ。

「だって、助けなきゃ……!」

 ミアンはすっかり混乱した表情で振り向いた。

「あの人がいなきゃ、先に進めないじゃない!」

 レインは首を振り、無線機を拾い上げると、ミアンの前に差し出した。タキオが放り投げた拍子に、 スイッチが入りっぱなしになったのか、無線機からは耳障りな機械音が流れてきている。

『おい、何だ今の音は! 何かあったのか?』

 ミアンは無線機に縋りついた。

「おじさんが、おじさんが、いきなり引き摺られるようにして、通風孔から消えちゃって……」

 無線機は一瞬、沈黙した。大体の状況を察知し、それより詳細な状況の把握は後回しだと、判断したのだろう。

『とにかくそこから離れろ。上方に向かって、進めるだけ進むんだ』

 そんなことを、言われても。
 パニックで茫然とするミアンを、レインが引っ張る。何? と見ると、後方を指差し、そのまま、四つん這いに後退し始めた。

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