「っ、らあっ!」

 怒声と共に、タキオは、機体の中に引きずり込まれた。

 二人は、機首にある操縦室のすぐ後ろの、狭い無線室の中に転がり落ちた。 爆音と粉塵、耳のちぎれるような風は一瞬で遠ざかり、エンジンの轟音のみが、周囲を包んだ。 タキオとオズマは、木の床の上に重なり合ったまま、しばらく身動きも出来なかった。

「いやあ、おったまげたなあ」

 操縦席に座ったオズマの部下の坊主頭が、機体を大きく反転させながら、意気揚々と振り向く。

「まさか、空中を走ってくるとはね。けど、俺の操縦技術も大したもんでしょう…… って、うわ! 旦那、血だらけじゃないですか!」

 ようやくタキオは体を起こし、無線席に寄りかかった。
 肩で息をしながら、顔をこすると、手が血塗れになる。 瓦礫の雨に打たれた時の、爆発で吹き飛ばされた時の、そしてガロウと戦った時の、血だ。

 痛くないんですか、と尋ねられ、タキオは溜め息をついた。

「痛いに決まってるだろ」

 しかし、首から上に無数のガラス片が刺さったような痛みを、一本ずつ抜いている余裕はない。

 タキオは立ち上がり、天測窓を閉めると、そこから外を覗いた。呆気に取られた鳥娘たちの表情が、 見る見る怒りを孕んでいくのが見える。
 粉塵と血に塗れた顔を叩くと、タキオは灰色の瞳に力を入れた。

「奴らが来るぞ」

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