サクランボ売りが口笛を吹くのを聞きながら、やがてロミが、呟いた。

「私、やっぱり、タキオと一緒に行く」

 レインとイオキは、一斉にロミを見た。
 タキオも彼女を見た。そして、何か言おうとした。しかし、結局は黙った。

「タキオの手助けをする。足手まといには絶対ならない。だから、お願い」

 そう言うと、ロミは丘の下から目を上げ、レインとイオキを見た。

「私は、人喰鬼を倒しに行く」

 イオキは黙っていた。レインも黙っていた。

 タキオが、大きなため息をついた。

「……レイン、イオキ。お前らはルツの家に戻れ。オズマの仲間に送ってもらうよう、もう手筈は整えてある。 イオキは他に帰るべき場所があるなら、奴らに言え。『世界協定』の奴らが、世界中のどこだって連れて行ってくれるさ」

 イオキは少しの間躊躇った後、小さく頷いた。

 レインは頷きたくなかった。勿論、ルツの家には帰りたい。けれど、この三人が一緒でなければ、嫌だ。

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