「彼らね…… うん。ユーリは若いし体力もあるから、労働力として売れるさ。
ロビタは…… あの外見だからな。まあ、この仕事を手伝って長いし、このまま手伝わせて、死んだら臓器を売るよ」 「悲惨だよねえ」 感嘆した風に医者は言った。 「イオキも、ユーリも、ロビタも。どう考えても、待ってるのは地獄じゃない。 僕だったら死んじゃうけど。あれでしょ? どうせ、お決まりの『箱』の台詞で、希望持たすようなこと言ってるんでしょ?」 冷酷に、ザネリは言い放つ。 「あんなの、鸚鵡の口真似みたいなものだ。それでも、言い続けていれば、多少の暗示効果はある」 医者はザネリの背中に向かって、言った。 「罪悪感、感じないの?」 ザネリは海を見つめたまま、黙って笑った。 「可哀想に」 本気で哀れむような声で呟くと、医者も海へ目をやった。 キラキラ輝く海の上を、カモメが舞う。 何物にも遮られることなく白い翼を広げ、海風に乗って、優雅に。 「自分の人生なのにねえ。どうして皆、自分の望んだ道を歩けないのかねえ。 彼らも、私も、君も」 -------------------------------------------------- |