ユーリは日に焼けた腕で、目元をぬぐった。

 そのまま洗い物を終えると、ユーリはそそくさと水場から立ち去った。

 アジトに戻り、外で洗濯物を干す為のロープを手繰っていると、ロビタがひょこひょこと中から出てきた。 ユーリは思わず構えたが、彼はただ、煙草を吸いに出てきただけのようだった。

 ロープに洗濯物を通していくユーリの横で、ロビタはぼうっと煙草を吸う。ユーリはしばらく無視していたが、やがて、尋ねた。

「俺たち、いつまでここにいるんだよ」

 ロビタはユーリの方を向き、乱喰い歯の間から、臭い煙を吐き出した。

「気になるか」

いひひ、とロビタは笑う。ユーリは一瞬怯んだが、勇気を出して続けた。

「ユーラクの領主がミトに代わって、色々予定が狂ったんじゃないのか」

 ロビタはポカンと口を開けた。目を見開き、まるで骸骨そのもののような表情になる。

「おめえ、知ってたのか」

 ユーリの中に、小さな勝利感が湧き起こる。馬鹿にするな。イジドール語が理解出来ないからと高をくくっていたのだろうが、 こちらだって、新聞の写真や人々の会話に出てくる固有名詞で、それくらいは推理出来るのだ。

 得意になって、ユーリは続けた。

「本当は俺もイオキも、ユーラクで売り飛ばすつもりだったんだろ。 けどミトが領主になって、ワルハラみたいに人身売買を禁止したから、思うように身動きが取れなくなったんじゃないのか?」

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