その時だった。

 不気味な音が、トンネルの奥から聞こえてきた。レインはぎょっとして立ち止まった。

 音は次第に大きくなり、やがて奥に、一対の強い光が現れた。
 白っぽい光は強烈にレインの顔を照らし出し、あっという間に、音と共にこちらへ近づいてきて、 硬直しているレインのすぐ前で止まった。

「はぁい、ニルノ。迎えに来たわよ」

「亜依(アイ)?」

 ブレーキ音を立てて止まったそれは、丸いフォルムの黄色い軽自動車だった。

 仰天した声を上げ、ニルノは顎が外れるほどあんぐりと口を開けた。 運転席から顔を出したのは、モデルのような目鼻立ちの、褐色肌の美人だった。不審な表情をするルツたちの間を縫い、ニルノは運転席まで すっ飛んでいった。

「アイ、どうして君がここに……」

「どうしてって、あなた、あの地図だけじゃ迷うんじゃないかと思って」

「ひょっとして、管理局に勤めてるお知り合い?」

ニルノの後ろからルツが尋ねると、女性はにっこり笑った。

「ええ。アイと言います。ここまで大変でしたね。さ、乗ってください」

 自動車の屋根に荷物を積み、狭い車内に何とか五人が乗り込むと、アイはジーパンに包まれた長い足でアクセルを踏んだ。

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