ヨミネの姿を探すモギに、ミトは嘆息混じりに教えた。

「彼なら、帰ってしまったよ」

 えぇ? と目を丸くするモギに、ミトは事の次第を話した。話を聞き終えたモギは憤慨したように言った。

「まあ呆れた。ヨミネったら、一体何しに来たのかしら」

「イオキに会いに来たのだろう」

全く、とモギはため息をついた。

「……私、今でも覚えてるわ。私たちが初めてイオキに会ったときのこと。イオキの育て親がお兄様に 決まった途端、ヨミネったら、まだ赤ん坊だったイオキを攫って逃げたのよね」

「そんなこともあったね」

思わずミトが思い出し笑いをすると、「笑い事じゃないわ」とモギは口を曲げた。

「すぐさまヒューゴが追いかけて捕まえたけど、ヨミネはなかなかイオキを離そうとしないし、しまいには泣き出すし……  まあ結局、『女王』が決めたことだから、ヨミネも逆らえなくて、あなたにイオキを返したのだけれど」

「その時から、僕はずっとヨミネに嫌われてる」

「馬鹿な子」

 しばらくの間、沈黙があった。

 ミトは手にした薔薇の香りを嗅ぎながら、ぼんやりイオキのことを考えていた。深い森のような緑の瞳、可愛らしい顔、 それらが今、どこにあるのか、どこにいるのかと言うこと。

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