「……でも、私も、少しだけ、ヨミネの気持ちが分かるわ」

 やがて、モギが呟いた。

 ミトは彼女の顔を見た。

 モギは相変わらず凛としていたが、それでも心なしか落胆している様子、 それをミトに悟られまいとしている様子が、見て取れた。

「イオキに会うのは久しぶりだもの。どんなに成長しているか…… 楽しみだったのだけれど」

そっくり同じ台詞を呟くムジカの姿が、ミトの脳裏に蘇る。

「具合が悪いって、ひどく悪いの? あの子はもともと体が弱いものね。可哀想に」

「……実は」

 と、ミトは言った。

「ヨミネにはああ言ったけれど、イオキの具合が悪いと言うのは、嘘だ」

モギは訝しげにミトを見た。

「あの子は今、家を飛び出して行方が知れない」

 モギの呼吸が、止まったように見えた。ただでさえ大きな瞳が、これ以上ないほど大きく見開かれ、白い肌がさらに白くなる。

「行方が知れない、って……」

 ミトは説明した。留守の間にイオキが人間農場の存在を知ってしまったこと、食人を拒否し、弱っていったこと、そして家畜を一人逃がし、 自分もそのまま出奔してしまったこと。

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