全て話し終えたミトは、我ながら冷静に話すことが出来た、と思った。
 しかし、モギの方はそうも行かなかった。彼女らしくもない取り乱した口調で、モギはミトに迫った。

「そんな…… それじゃああなたは何故、こんなところにいるの? こんなところにいないで、イオキを探さなくては……」

「勿論そうしたいが、僕には仕事がある。特に今は、ユーラクの政治から離れるわけにはいかない。あまり大掛かりな捜索を させると、どこから情報が漏れてテロリストに勘付かれるか分からないから、ワルハラ軍の諜報部隊の者に捜索を任せている」

「けど、もう二ヶ月近く経つのでしょう? ただでさえ、あの子は体が弱いのに。テロリストに捕まったら、殺されてしまうかもしれない」

「落ち着きなさい」

 はっきりミトは言った。モギははっとしたように口をつぐんだ。ミトの顔は心なしか青褪めて見えたが、それでも平静さを失わず、 穏やかに彼は続けた。

「……全く、ヨミネに言わなくてよかった。あの子に言ったら、今頃どんな騒ぎになっていたことやら」

そっとミトは彼女の肩に触れた。

「このことは、他の誰にも言うつもりはない。コンにもヒューゴにも、『女王』にも」

「女王にも?」

囁くようにモギは返した。暗い表情でミトは頷いた。

「彼女には、知らせない。知らせたところで、どうにもならない。彼女はイオキを憎んでいるから」

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