彼女が愛情込めてミトの両頬にキスすると、ミトも軽くキスを返した。その動作は二人とも至極優雅で、まるで二羽の駒鳥が歌い 合っているようだった。

 ミトが抱擁を解くと、モギは一歩下がり、彼の全身に目をやった。

「素敵な服ね」

「君も、とても綺麗だ」

二人は共に、白い衣装を着ていた。ミトはシンプルな白いシャツとズボンの上に、一見無地だが緻密な紋様が織り込まれたベストとネクタイ、 ジェットのカフスやネクタイピン。モギは胸の開いた総レースの白いドレスで、首にはカメオのチョーカーを巻いている。

 モギは形の良い顎を上げ、壮麗な白いホールを見回した。天上も床も柱も、全て純白の大理石で出来たそのホールは、まるでたった今、月光を固めて 出来上がったばかり、という風に見えた。

「……この場所にやってくるのも、久しぶりね」

 ミトは頷いた。

「百合を飾ってくれたのは、モギ?」

 ホールの正面扉から奥へ向かって並ぶ、二列の柱の一本一本に、百合の花が飾られている。

「ええ。今回の準備は私が引き受けたから。奥の準備も万端よ」

「すまないね。一人に全て任せてしまって」

「仕方ないわ。お兄様が忙しいのは承知しているし、コンや日向瑚(ヒューゴ)に手伝わせたら、余計仕事が増えるだけだし」

ミトはくすりと笑った。モギも笑いながら

「それに花を用意してくれたのは、黄泉音(ヨミネ)なのよ。……あら、そう言えばあの子、どこへ行ったのかしら?」

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