マリサの言った通り、丘を越え、森を抜けた途端、目の前が開けた。

 レインは目を丸くした。

 広大な牧場が、道の両側に広がっていた。朝日に照らされた牧草の上に、ところどころ木々が黒い影を伸ばし、 そして何か白い物が、ひとかたまりになって動いていた。

 車はしばらく牧場の中を走っていくと、やがて、ぽつんと建った一軒の家の庭に入っていった。

 白い壁に茅葺屋根の、大きな平屋造りの家で、庭にはトラクターと二台の軽トラックが停まっていた。 その隣に黄色い軽自動車が停まるなり、牧場の方から一頭の犬が走ってきて、激しく吠えた。 ほとんど同時に開け放してあった玄関から、人が出てきた。

「越雫(エッダ)!」

 車の窓から顔を出してルツが声を上げると、相手はこちらへ走り寄った。

「ルツ! 新聞見て、来るんじゃないかと思ってたのよ。あんた、大丈夫なの?」

そう言ったのは、鳥の巣のような頭をして、ふっくらした体をTシャツとジャージに包んだ、ルツと同じくらいの年齢の女性だった。 彼女の顔を見たルツの表情は、急に緩んだ。

「ええ。急に押しかけて、ごめんなさいね」

「それはいいんだけどさ。うちはいつでも人手不足なんだから」

エッダはにやりと笑ってウインクしてみせると、車のドアを開けた。

「さあさあ降りて。ところでこの車、どうしたのよ?」

「この人たちが、ここまで来るのに協力してくれたの」

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