コンが尋ねると、ミトはテーブルの上へ目を注いだまま、黙って頷いた。


 その青い視線の先にあるのは、死者への供物。
 目を瞑り、安らかに胸を上下させる、幼い全裸の少女。


「じゃあ美味しいのはまちがいありませんね!」

 コンは満足げに言う。
 ミトが立ち上がると、ヒューゴが声をかけた。

「なあ、せめて起こさないか? これじゃ、最初から死んでる人間を喰うみたいだ。少しでも暴れてくれた方が、俺はいいんだけどな」

 ミトは静かに首を振った。

「彼女は目覚めない。もう二度と」

 部屋は静まり返った。

 グールたちは思い思いの視線で、犠牲の供物を眺めた。
 ヒューゴは面白くなさそうな表情で、コンは微笑を浮かべ、モギは目を閉じて。 そしてミトは、凪いだ海のような瞳の中に、沈みゆく夕日のごとく輝く、琥珀色の瞳を思い出して。


 哀れな同胞。最後の最後で、見ないフリをしてきた暗い影に、光を当ててしまうなんて。


 或いはもう少し早く認めていれば、あの時のヨミネのように、僕の手からイオキを奪い去ることも出来ただろうに。

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