しかし、体の緊張が解けたわけではない。 ひとまず男の方は離れていったものの、二人はまだ、リネン室の中にいる。 男は少し酔っているのか、陽気な口調で言った。 「いやー、豪華なオープニング・パーティーだったね。あの、六十三年物のシャンタン・ワイン。 あれを百本も用意するなんて、流石、エイト・フィールドは太っ腹だ」 「飲み過ぎだ」 「いいじゃん。どうせ、目当ての商品が競売にかけられるのは三日目なんだし。それまではお祭り騒ぎを楽しもうよ」 「あれは、元々私たちの物」 男の言葉を無視するようにして、女はさらに続ける。 「絶対に、他の人間に競り落とされるわけにはいかない」 ギシ、とシーツのバスケットに重さがかかる音がして、男は言った。 「分かってるって。その為に組織の活動資金を丸々預かってきてるんだし、ちゃんと競り落とすよ。けど、競り落とした後はどうするの? ネリダ博士とか言ったっけ? その人の研究レポートだか何だか知らないけど、そんなのが、僕たちの活動にどう役立つわけ?」 「手に入れれば分かる」 淡々と女は言った。 「あれは、私たちの活動の根底にして終着。あれさえあれば、私たちは、人間をグールの支配から解き放つことが出来る」 -------------------------------------------------- |