「え?」 ロミは通路の奥にいるニルノを見た。床にぺたんと腰を下ろし、ぶつぶつ呟くニルノは、 一見平静なように見えたが、顔色は真っ青だった。 「どこでだったけなあ。思い出せないなあ……」 思わず心配になって、ロミは尋ねた。 「大丈夫?」 ニルノは虚空を見つめたまま、呟いた。 「吐きそう」 「え?」 「何か俺…… 酔ったかも」 言っている側から、ニルノの唇は真っ白になり、額に脂汗が浮かんでくる。仰天したロミはいそいで立ち上がり、ニルノの側に駆け寄ると、彼の背中をさすった。 「ワルハラからレトーに来る時は、全然平気だったじゃない!」 しかも波は、全く大したことない。常に聞こえているエンジンの音さえなければ、陸にあるホテルのリネン室と錯覚する程なのに。 「ちょ…… さすらないで…… それより袋か何か……」 墓穴に片足を突っ込んだような表情で、ニルノは呟いた。ロミは慌てて自分のポシェットをさぐったが、袋代わりになるような物は何もない。 今度はニルノのベルトについているポーチを探そうと手を伸ばした時、再び、今度は威勢の良い音と共に、扉が開いた。 「ああもう最悪! ザネリのせいで、大損よ!」 同時に、ニルノの喉から気味の悪い音が漏れ、咄嗟にニルノは、両手で口元を塞いだ。 -------------------------------------------------- |