「お? とうとう吹っ切れたか」

「今更うだうだ言っても仕方ないからね。腹決めたよ」

 ニルノが真剣な表情でテーブルに肘をつくのを見て、ロミも姿勢を正す。タキオはバナナジュースをテーブルに置くと、 「よし」と頷き、レトーの地図を広げた。

「まずは情報の整理だ。エイト・フィールドの闇オークションが行われる『ユニコーン号』は、今日深夜零時に、ここ 阿比留(アビル)島から出航し、三日間かけて、太良(タラ)島へ向かう。途中寄港はしない。軍や警察に乗り込まれることもない、 動く密室の中で、オークションは行われる」

「オークションはアスナの時と同じく、完全招待制。けど、規模は全然違う。恐らく二千人近い人間が招待されているはずだ」

ニルノは難しい顔で、眼鏡に手をやった。

「招待客も、個人主催の誕生日パーティーなんかと比べ、ものすごく厳しく選別されてる。 ほとんどがエイト・フィールドの息のかかった企業や、重要な取引先、個人資産家ばかりみたいだ。 しかも招待客は予め顔写真をエイト・フィールドへ送り、乗船の際には、その顔写真との照合がある。それに持ち物検査と、身体検査」

「何つっても、三年に一度しか開催されない、エイト・フィールドの重要な資金源だからな。この前みたいな正面突破は、 実質不可能だ」

全く、とタキオは息を吐いた。

「あのグラサン野郎、俺たちを罠に嵌めるつもりはないみたいなこと言ってたが、ここまでセキュリティが厳重なら、 確かに罠なんか張る必要ねえな」

「でも、潜入するんだよね?」

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