心なしかワクワクと、ロミが言う。タキオは頷き、顎をしゃくった。

「正面から入れなきゃ、裏口に回れってな」

 三人は揃って振り向いた。

 カフェの周囲には、舗装された道一本を挟んで、棕櫚を始め多種多様な植物がジャングルのように生い茂っている。道の向こうは 急な斜面になっていて、それらの葉の間から、下方を見下ろすことが出来る。

 緑の葉陰に見えるのは、アビル島一大きな港と、そこに停泊する巨大な豪華客船。
 日差しを照り返して、まさに伝説の一角獣のごとく輝く、純白の船体。

 十二時間後に出航を控えた、『ユニコーン号』だ。

 船殻から煙突まで純白に塗られたその姿は、神秘的なまでに美しい。重さ五トンを越す巨体で、同じ港にいる他の船を、 虫けらのごとく押し潰しそうだ。
 カフェにいる他の客たちも、世界最大の豪華客船と呼び名が高いユニコーン号を目の当たりにして、感嘆の声を上げたり、 木々の間から写真を撮ったりしている。

「ユニコーン号はワトムの個人資産だが、普段はレトー最大の海運企業、シー・コン社の最上級豪華客船として、レトー国内を巡ってる。 ああやって堂々とオークション用の商品を積んでも……」

 次々と積荷が甲板に上げられていくのを見ながら、タキオは言った。

「誰も怪しんだりしない」

 ふうむ、とニルノは唸った。

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