『蠍』たちが止める間もなく、パントは宙に向けて銃を撃った。

 発射された銃弾は、エンジンの熱膨張を防ぐ排気弁すれすれを掠め、タキオが潜んでいるすぐ近くの壁に当たった。 「止めてください!」と黒服たちは悲鳴を上げた。

「エンジンにでも当たったら、どうするんですか! 爆発しますよ!」

 全くその通りだぜ、と言いながら、タキオはパントに向かって飛び降りた。

 ガラガラガラ、と天井から金属質の音が聞こえ、パントがそちらに目をやった時には、もう彼の顔面に、鉄板入りブーツを履いた タキオの足裏が迫っていた。天井に設置されている機関整備用クレーンの上に潜んでいたタキオは、クレーンの鎖を掴んで飛び降りると、 振り子の容量でパントを蹴り倒し、そのまま後ろに並んでいた黒服たちを、次々と薙ぎ倒していった。

「おっと。撃つなよ、撃つなよ」

 鎖から手を離して床に飛び降りると、すぐさまタキオは後ろを向き、倒れた姿勢でこちらに銃を向けてくる黒服たちに、言った。

「撃ったら、後ろのエンジンに当たっちゃうぞ」

 う、と躊躇する黒服たちの隙をつき、タキオはまずは一人、一番手前にいた男の頭を蹴り飛ばした。その後ろから、ナイフを取り出して 襲い掛かってくる二人の攻撃を、屈んで交わし、さらにその奥にいる一人を殴り倒す。反転して戻ってくる二人分のナイフを片手で受け止め、 その腕の硬度に目を丸くする二人を、回し蹴りでまとめて片付ける。

 その背中に、銃弾が続けざまに当たる衝撃を感じ、タキオは振り向いた。

「だから、撃ったら危ないっつってんだろーが」

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