私に殴られたのに、あんまり怒ってないようなところとか。
 そう言うとアリオは、眠そうな顔のまま言った。

「あれは僕にも原因があるよ〜。それに君、ちゃんと謝ってくれたじゃん」

「それはそうだけど……」

 躊躇してから、ロミは思い切って付け加えた。それに、 オリザは謎めいているが、その眼差しには、タキオに似た、強い意志を感じる。しかし彼には、それがない。言動も、部外者のようだ。
 するとアリオはあっさり「まあ、半分、部外者みたいなものだからね」と認めた。

「『東方三賢人』に出資してるだけで、正式なメンバーじゃないんだ。今回のこれも、オリザがどうしても競り落としたい 物があるって言うから、僕の招待状を使っただけだよ」

 つまり、パトロンと言うわけか。しかし彼らの意思に強く賛同しなければ、パトロンになどならないだろう。 それなのに、彼の、どこか覚めた視線は何なのだろう?
 何となくロミは府に落ちない物を感じたが、それ以上追求しなかった。それよりも、いよいよ会場の空席が少なくなり、 参加者の熱気も増してきたのを見て、ロミは話題を変えた。

「私、オークションに参加するのって初めてだけど、凄い雰囲気だね。何か皆、楽しそうだけど、緊張してるみたい」

「そりゃあ、どの商品も、この機会を逃したら、二度と手に入らないような代物ばかりだから」

アリオは薄笑いを浮かべ、前方にある壇上を眺めた。

「勿論、純粋に購買意欲をそそるんだけど、お金持ちにとっては、一種のステイタス誇示なんだよね〜。 昨日、一日目のオークションに参加してきたけど、凄かったなあ。古代王朝遺跡から発掘された翡翠の王冠とか、氷竜の完全な化石とか。 『一つ頭の双子』なんて言うのも出品されてたんだけど、ヤンネ卿とフェリス・コンツェルンの物凄い競い合いになって、 見てたら僕も参加したくなっちゃって、気に入ったの一つ競り落としちゃった」

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