ええ、その通りですよ。とタキオは心の中で、彼らに向かって毒づく。その密航者とは、俺のことですよ。

 大小様々な大きさのガラスケース、戦車や恐竜の骨の間を縫い―― 流石にそれらを入れられる大きさのガラスケースはなく、むき出しのまま、 周囲に柵が設けられていた―― ホールを一周し、二人がここにいないと判断すると、タキオは展示室を後にした。

 腕時計を確認すると、ちょうど出航して半日、正午を過ぎた頃だった。三時間後には、船楼の最上階にある大広間で、 オークションが始まる予定だ。パーサーから上手いこと掠め取った予定表、 そして船内見取り図を確認すると、タキオは船楼内部を歩き出した。

 昼時と言うこともあり、船内は賑わっていた。

 ユニコーン号は大雑把に言うと、前方部、中央部、後方部に分かれており、甲板下の船首に近い前方部が一等客室、船尾に近い後方部が二等、 三等客室、中央部がショッピングモールで、甲板上の船楼一階まで吹き抜けになっている。船楼の上階はプールや高級レストラン、 映画館や図書室などだ。
 空は快晴、波は穏やかで、一日目のオークションに参加しない者たちは、 のんびりとショッピングをしたり、展望台から景色を楽しんだりしている。 豪華な内装や、中央部を上下するエレベーター、そこかしこで 見かける美人揃いの案内係たちを見ていると、まるで、ワルハラ第一都市駅前の老舗デパートを歩いているようだ。

 彼女たちに二人を呼び出してもらえればどれほど楽か、と吹き抜けの通路を歩きながら、タキオは考えた。自分の足で探すとなると、 絶望的な広さだ。それに、二人がショッピングモールをウロウロしているとは限らない。客室に潜んでいる可能性は低いにしても、 例えば船の機関部や倉庫などに隠れている可能性も十分に考えられる。
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