ようやくカトリの挨拶が終わり、会場が明るさを取り戻すと、ロミはゆっくり息を吐き出した。

 同時に、入れ替わるように進行役が壇上に上った。

「それではカタログ三十番から。ワルハラ前領主が五百の城で行った、数々の拷問の記録写真。六十六枚セット。三百万からどうぞ」

 進行役が言い終わるか言い終わらないかの内に、隣に座っていた品の良い老紳士が勢い良く腕を挙げ、ロミはびくっとした。 彼に釣られるように、次々と、会場のあちこちから、他の腕が挙がる。

「はい、四百万。四百五十万。四百六十、八十。五百万。他にいらっしゃいますか。六百万が出ました」

人々は、人形か何かのように、無言で腕を挙げては、下ろしていく。驚きつつもよく見ると、その先の指の形が、皆それぞれ違う。 様々な指の形が乱立する会場を見渡しながら、進行役は、立て板に水を流す勢いで喋り続ける。

「千三十。千三十万です。他にいらっしゃいますか。はい、それでは千三十万で落札です」

 かん、と高く木槌が鳴らされ、落札出来なかった老紳士は、大きく舌打ちして椅子に沈み込んだ。

 あっという間に次の商品に進んでいくのを見ながら、ロミはアリオに囁いた。

「今の、どうやって数字が出てたの?」

「サインがあるんだよ。何十万乗せるとか、倍にするとか」

へえ、と感心の息を漏らしながら、ロミはさらに首をひねった。

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