ゆっくりと重たげな靴音を響かせながら、ユニコーン号の船長は、歩み去っていった。

 彼が声をかける先々で、「ありがとう、素晴らしい航海だった」と人々が声を上げるのを、ニルノは黙って見つめた。 そのシャツの裾を、ロミがぐいと引っ張った。

「行こう」

低い声で言うと、ニルノの返事を待たず、歩き出す。

「ねえ」

 とその背中を追いかけながら、ニルノは言った。

「本当に、これでいいんだろうか?」

 すると、日差しが降り注ぐ甲板の上で、ロミは唐突に立ち止まり、振り向いた。

「そんなの、私だって、分かんないよ!」

 そう叫んだロミの小さな顔は、泣きそうに歪んでいた。
 苛立ちと怯えと、苦悩。
 ニルノははっとして、言葉もなく、潮風に吹かれて潤む金色の瞳を見つめた。

 ロミは苦しそうに小さく息を吸うと、静かに続けた。

「でも私は行く。ニルノも、約束したんだから、最後まで一緒に来てよ。
 ……本当は私、知ってるんだよ。本当は、あなたが……」


 止めてくれ。
 ニルノの胸の中で、誰かが叫んだ。

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