パーサーから手に入れた予定表では、今この時間、船楼最上階の大広間では、全てのオークションを終えたエイト・フィールドたちが、 ささやかな打ち上げパーティーを行っているはずだった。

 参加者は、オークションの四大出品者であった、人身売買専門組織『蟻』、銃器売買専門組織『蝿』、麻薬売買専門組織『蝮』、 盗品売買専門組織『蟷螂』のトップと、以下幹部たちだ。 勿論、『蟷螂』のボスであるパントは出席していない。暗殺専門組織『蠍』のジュアンと部下たちは、今も血眼になって、彼の消息と 密航者の所在を追っている。

「始めるぞ」

 セキュリティの為か、エレベーターは、最上階の一つ下の階で折り返し運転になっていた。
 非常階段を使って最上階まで上がったタキオは、くぐもった声で言った。口元を迷彩柄のマスクで覆っているせいだ。 ロミも真っ赤な髪と金色の瞳を、キャスケットで隠している。

 肩で息をしながら、ニルノは頷いた。

 つい数時間前までオークション会場として賑わっていたのが嘘のように、フロアは静まり返っている。銃を構えた黒服が何人か、足音もなく フロアを徘徊している。

 タキオとロミはしばらく物陰から様子を窺っていたが、やがて彼らの目を盗み、風のように飛び出した。

 二人が扉を開けると、近くにいた何人かが振り向いた。控え室に用意されたシャンパンや軽食を、頃合を見計って隣の会場へ運ぶ、 給仕たちだ。

「申し訳ありません、お客様。ここは……」

銀の盆にクリームチーズとキャビアを乗せた給仕が、にっこり微笑んでそう言いかけるのと同時に、片腕のテロリストは、 彼の首に腕を巻きつけた。

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