銀色の盆が床に落ち、派手な音を立てる。

 周囲の給仕たちが反応するより早く、扉を閉めたロミは、近くのテーブルに飛び乗り、「動かないで!」と叫んだ。
 給仕たちはきょとんとした。ロミがホットパンツのポケットから拳銃を取り出して見せ、ようやく顔が青くなるが、それでも何人かは笑顔を浮かべ、こちらに 近づいてこようとした。

「お嬢さん、それは玩具じゃないんだよ」

 分かってる、と答える代わりに、ロミは無言で拳銃を撃った。サイレンサー付きの拳銃は、発砲音こそ静かなものだったが、 天井の蛍光灯を割り、破片を雨のように降らせた。こちらに手を伸ばしかけていた給仕たちの笑顔が、凍りついた。

「安心しろ。お前たちはすぐにここから出してやる。手を頭の上にして、床に伏せろ」

タキオの命令に、給仕たちは急いで従った。タキオは拘束した給仕の耳元に囁いた。

「会場に行って、他の給仕たちを呼び戻せ。エイト・フィールドに怪しまれないようにな」

 いかにも気弱そうな顔をした給仕は青い顔で頷くと、すぐに会場へ行って、言われた通りにした。彼と共に戻ってきた数人の給仕係は、他の給仕たちと同じように、 フローリグの床に伏せた。

 それを見たタキオは、部屋の隅に寄せられていたアップライトのピアノを蹴って動かし、会場へ続く扉を塞いだ。 そして自身は外の廊下へ出る扉の前に立ち、ジャンパーの内側から無線機を取り出した。 パントたちを倒した時に『蠍』の一人から拝借した無線だ。

 無線のスイッチを入れ、タキオは咳払いした。

『よう、ジュアン。パントは見つかったか?』

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