黒服たちの懐疑的な視線を無視し、カトリは尋ねた。

「広間の様子はどうなの?」

無線を握り、途方に暮れた表情で、彼らは答えた。

「ジュアン以下広間に閉じ込められた『蠍』が内側から扉を開けようと試みていますが、何せ分厚い鋼鉄製の扉ですし、全く歯が立たないようです」

「勿論我々もパーサーに命じて、扉を開けさせようとしたのですが…… 鍵が全て、何者かによって盗まれてしまったようで」

「広間に閉じ込められているのは、カトリ様を除いた『蟻』、『蝿』、『蝮』の各ボスと幹部たち、閉じ込められる直前に駆けつけたジュアンと 部下の『蠍』、合わせて約九十名。それと…… パント様の死体も発見されたそうです」

「何ですって?」

カトリは眉を上げた。

「広間のシャンデリアの上に、死体が隠されていたそうです」

 カトリは沈黙した。

 三度、船が揺れた。今度はかなり大きな揺れだった。

「危ない! 掴まって!」

 二等航海士が叫んだ。

 すでに救命ボートはかなりの数が海上に下り、乗員は客、船員含め、大部分がユニコーン号を脱出していた。甲板に残っているのは、 オリザたちを含む僅かばかりの乗客と船員、そして船長のクロードだけだった。

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