「大好きよ」

 ニルノの目が、大きく見開かれる。

 アイは静かな、幸福と愛情に満ちた声で続けた。

「あなたのその、まっすぐなところが好き。どんなに迷っても、転んでも、光を見失い道が途切れてしまっても、 それでも前に進もうとする、あなたが。そうやって辛い思いをしながらもがいているあなたを見ていると、私、何とかあなたを、 望む方へ連れて行ってあげたいって、思うの」

 雪解けの透明な水が、胸の堰を越えて、溢れ出してくる。

 タキオと共に語った言葉が。必死に原稿用紙に認めてきた思いが。無言でこちらを見たレインの瞳が。夕べの海に沈んでいくユニコーン号が。

 鋼鉄の灰色の瞳が、燃えるような金色の瞳が。

 そして恋人と共に過ごしてきた、幸福な時間が。

 ニルノはたまらず、目を閉じた。
 「もうこれきりだ」とタキオに告げた時の気持ちが止め処なく溢れ、後悔に、寂寥に、痛恨に変わっていく。


『俺はもう、君とは一緒に行けない。一緒に戦えない。俺は……』


 暮れなずむタラ島で、タキオの瞳をまっすぐ見つめながら、ずっと言おうと思ってきた言葉を、ニルノはまっすぐ告げた。

 ずっと、胸に用意していた言葉だった。だから、こちらを見据える灰色の瞳に臆することもなく、落ち着いて、切り出すことが出来た。

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