「今年はね、祠に捧げる祈祷に、墓荒らしのことも加えるみたいよ」

 行列が遠くなるに連れ観光客も移動し、通りは次第に静かになっていく。地面が七色に光っていることには変わりはないが、 人がいなくなったことで、急に一段と暗くなったように、思える。

「蛇神様は大地の神様じゃて。墓荒らしの面倒まで見てくれるのかいな」

「死人だって地中に埋まってるんだから、蛇神様の管轄だろうって、巫女さんが言ったらしいよ」

「そういうもんかのう」

 老人は黙った。女もちょっと黙り、軒先のオルムランプをいじった。そして、続けた。

「……けど本当に、気味が悪いよ。一体誰が、何の目的で、墓から死人を引っ張り出してるんだろう」

老人は首を振った。

 誰も、答えられるわけがなかった。
 この夏から、町の下層にある墓を荒らし、土葬されている死人を引きずり出しているのが、何者なのかなど。

「聞いた話じゃ、新しい墓ばかり狙ってるらしいよ。まだ死体が骨になっていないようなさ」

「もしかしたら、起き上がったのかも知れん」

老人はぽつりと呟いた。

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